小舟渡遊園

 小舟渡は九頭竜川沿いの風光明媚で、小舟を連ねて鎖で繋いで板を渡して「舟橋」としていた場所であった。福井県の豊かな水利資源を開発していた京都電燈が1914年(大正3年)に越前鉄道を開通させると、沿線の小舟渡に自然の地形を利用した一大遊園地を開園させた。

 小舟渡遊園のコンセプトは山中に安置された33体の観音像を巡りながら湧水や滝、渓流などの山水の景観を眺め、山頂からは白山連峰や三国海岸を望むことができると言うものであった。小舟渡の舟橋は増水時にたびたび流されることがあったので、1923年(大正12年)に鉄橋として小舟渡橋が架けられた。当時鉄橋は珍しく、その橋をひと目見るために見物客や小学生が遠足に訪れたと言われる。この橋は今も健在である。九頭竜川対岸に小舟渡グラウンドが1925年(大正14年)6月にオープンし、小舟渡競馬も開催される。夏には遊園とグラウンドを結ぶ小舟渡橋は電球で飾られ、その光が川の水面に照らされて幻想的な風景が見られた。1926年(大正15年)に遊園内に食堂と浴場を開設。食堂は手頃な価格で、夏場には九頭竜川で取れた鮎の料理を売り物にしていた。遊園では様々なイベントを開催し、鮎狩りや鵜飼、鉄道省の勝景映画上映、吉田菊五郎一座や喜楽会一行の公演が行われた。小舟渡橋のたもとは天然の水泳場として水泳大会や練習場として使われた。冬は後山のなだらかなスロープでスキーが楽しめた。1928年(昭和3年)秋に遊園の浴場を全面改築して電気温泉風呂とし、窓から九頭竜川の景観や白山を望むことができた。小舟渡遊園は遊具は設置されておらず、景観と温泉と料理を楽しむ場所だったようである。

 1961年(昭和36年)9月1日に「小舟渡かまぶろ温泉」がオープン。眼下に九頭竜川の絶景が見られる超音波風呂が目玉で、夏には蛍狩りや花火大会、大広間では大衆演劇や舞踊、歌謡ショーを行い、季節感あふれる料理を提供していた。一時期はかなり賑わったが、入場客の減少で小舟渡かまぶろ風呂温泉は2002年(平成14年)3月15日に廃業。小舟渡遊園の歴史は幕を閉じた。